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第四章 異国の魔物
彩が目覚めた。
目の前にはキラキラ光る大きな木が有った、見上げると、ずっと上まで有る高い木だ。
「ここは主様の…」
私の目の前に何か現れた、しかし眩しくて姿は見えない。
「私は、この木の精だ、命と時を支配する、皆からは主と呼ばれている」
「はい、存じています」
彩は平伏した。
「あれっ、お前はこの前の女では無いか、何故ここに居るのだ」
「はい、大店の娘に刀で胸を刺され死にました」
「えっ、お前は再生の呪文を聞かなかったのか、三回までなら生き返る」
「私はロールプレイングゲームですか」
「では改めて教えよう」
「はい」
「カンカンゴウゴウ」
「えっ、それは」
「何か?」
「いえ、何でもありません」
「その呪文を唱えたら、生き返り死んだ時間に戻る」
「ありがとうございます」
「それと、イギリスの魔女が魔物達を連れて大阪に上陸したようだ、早く行け」
「ありがとうございます」
彩は呪文を、唱えた。
「カンカンゴウゴウ」
彩の周りが明るくなり、次第に周りの景色がハッキリと見えて来た。
あの大店の離れに居る。
あの娘が寝転び、ぶつぶつ言っていた。
「惜しや、日月護身剣」
彩は娘の後ろから近づき、肩をトンと叩いた。
振り向いた娘は驚いた。
「あっ雪女、ちくしょう、出合え~」
庭に居た用心棒が二人、部屋に入って来た。
「お春様、いかがなされました」
彩を見て驚いて刀を抜いた。
彩は、すぐに吹雪を起こした。
彩を中心に吹雪が竜巻のように吹き荒れる。
顔に吹雪が当たり、用心棒も、お春も目を開けられない。
彩は庭に出て、それから空に飛び上がり見えなくなった。
お春も庭に飛び降りた。
「ちくしょう、泰屋(はたや)の春を舐めるなよ、必ず日月護身剣は取り返す」
お春の西陣織りの着物は雪まみれになっていた。
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