第四章 異国の魔物

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逢坂山の下りに入ると、月が一番高い位置に来ていて辺りは明るい。 しばらく行くと、若い町娘がしゃがみ泣いていた。 「どうされましたか」 私が聞くと女は顔をあげた。 「はい、転んで足が痛くて歩けません」 女は左膝をさすっている。 「お困りでしょう、私が背負ってあげましょう」 私が跪くと、女がおぶさって来た。 その瞬間。 女の手が、みるみるうちに太くなり、体も大きくなり、まだまだ大きくなる。 私は女の重みに耐えられずに、うつ伏せになった。 「やい、金を出せ、わしは鬼熊だ」 (あやかしか、仕方がない) 彩が雪女になろうとした時。 ガツン 何かが鬼熊に当たった。 鬼熊は2メートルくらい飛ばされた。 よく見ると金剛杵が飛んでいる。 すぐに小雪の姿になった。 「彩お姉ちゃん」 すぐに抱きついて来た。 「心配かけてごめんね小雪」 「良かった」 倒れた鬼熊は、まさに大熊のような姿だった。 そばには沖田が立ち、鬼熊に刀を突き付けていた。 「これは日月護身剣だ、お前なんかイチコロだぞ」 「わかりました、逆らいませんです」 鬼熊は平伏した。 「私は鬼熊です、普段は女ですが、人間の暮らしに慣れ、こうして熊になり生活する金を盗んでいます」 五助とおみよも追い付いて来た。 「彩さん、生きていて良かった」 「ごめんね、五助、おみよさん」 三人は、強く抱きしめ会う。 彩は沖田に向き直る。 「沖田さん、本当に助かりました」 沖田も笑顔だ。 「水筒に貼り付けた、お札が彩さんが戻ったと知らせてくれた、彩さんは戻ると私は信じていた」 沖田は刀を納めて言った。 「熊熊、助けてやるから泰屋の店や家を壊して来い」 「はい、承知致しました」 「では行け」 鬼熊は若い女に変わる。 沖田は鬼熊の首に、お札を貼った。 「裏切れば、お前は大変な事になる」 「わかりました」 鬼熊は去った。 「彩さん、日月護身剣と財布だ」 彩は嬉しそうに受けとる。 「ありがとう沖田さん、私は伏見稲荷神社に知り合いがいます、今から行きましょう」 「わかった行こうか」 すぐに五人は伏見稲荷に向かう。
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