第四章 異国の魔物

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彩が若侍に変わった時よりも、さらに精悍な強そうな侍に化けた。 腰には九字刀を指している。 近くにある口入れ屋(仕事紹介)に入る。 年配の、やり手な印象の男二人が座っていた。 「用心棒の仕事は無いか」 「はい、今、泰屋様の手代の方が来られていて、腕のたつ用心棒を探しておられます」 もう一人の男が話し出した。 「あんた、剣術の腕は?」 男は湯飲み茶碗を右手に持っている。 「その湯飲みを私に投げろ」 「ケガをしても知らないぜ」 男は、すぐに湯飲みを彩に向かって投げた。 男には、抜き打ちを出して刀が何回かピカピカ光ったように見えた。 湯飲み茶碗が土間に落ちた。 「凄い」 男が確認に行くと、湯飲み茶碗は32個くらいに切られていた。 「凄い腕だ、雇いましょう、一日一両では?」 「前金20両、一日一両だ」 「わかった、雇いましょう、あなた様のお名前は?」 (しまった考えていなかった) とっさに頭に浮かんだ名前にした。 「楽尾(ラグビー)だ」 「楽尾様、では店まで、ご案内致します」 彩は、手代と泰屋に向かう。 (しめしめ、上手く行った) 彩が切ったのではない、九字刀が実力を出したのだ。 途中、手代が話し出した。 「最近、いろいろ有りまして、あやかしが現れたり、大熊が暴れたりしましたが、用心棒は全然役に立たなかったんです」 「そうか」 泰屋に着いた。 お春の居た離れとは別の離れに案内された。 中に入ると浪人が十人居た。 一斉に、こちらを見て怒鳴った。 「挨拶しろゃ、お前は一日いくらだ」 「一両だが、前金二十両もらった」 「お前だけ、二十両もらいやがって」 一斉に全員が立ち上がり向かって来た。 彩は九字刀を抜いた。 「ご主人様、お呼びですか?」 「こいつらを手懐けてくれ」 「承知致しました」 刀から閃光が出た。 すると浪人逹が、態度をコロリと変えた。 「失礼しました」 「どうぞ、お座りくださいね」 「酒有りまっせ、どうぞ」 (恐ろしい効果だ) 親玉のような浪人に聞いた。 「最近、おかしな事ばかり起きるらしいな」 「はい、あやかしが出たり、大熊が出て暴れたり、この前は異人が三人来て泊まっています」 「イギリス人か?女?」 「はあ、女が一人、男が二人、不気味な奴らです」 「呉服を買いに来たのか?」 「それが京に住みたいから、どこかの屋敷を世話してくれと頼みまして高価な宝石をたくさん、お春様に差し出したのでございます」 (京に住み着く気か) 「しかし、頼みながら、今日の朝には姿が消えたらしいです」 「何処に行ったかわかるか」 「お春様も、旦那様も知らないようです」 (それなら用は無い) 翌朝、用心棒達は楽尾が消えているのがわかり騒ぎになった。 その頃。 彩は、よろず相談処に戻って来ていた。 「二十両、ただでもらっちゃた、悪いことしたかな」 中に入ると、女が頭を下げた。 「どなたですか」 「私ですよ、鬼熊です、しばらく置いてくださいな」 「沖田さん、お札は外しましたか?」 「とっくに外したよ、何でも俺に一目惚れらしい」 沖田さんが笑った。 「嫌ですよ」 女は顔を赤らめた。 「お熊って、呼んでくださいな」 彩は沖田さんの人の良さにあきれた。
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