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寺田屋の二階の部屋に入ると、龍馬は部屋の戸を閉める、下は船着き場で船やたくさんの人がいたからだ。
座るなり彩に菊一文字を見せてほしいと言った。
彩は菊一文字を渡す。
龍馬は刀を抜く。
彩が見ても、細い刀身に美しい輝きだ。
「よくやった、これはわしが預かる」
「あのう」
「何だ」
「実は東郷様は新選組に捕らえられました」
「そうか、気にするな、あいつは忍びの心得がある」
「忍びって、忍者ですか」
「そうだ、あいつが捕まるなら、また何かしたいのだろう」
「そうなんですね、しかし菊一文字はなにに使うのですか」
「うん、あやかしを退治するためだ、わしら土佐と薩摩は菊一文字を手に入れるために探していた」
「あやかしって妖怪ですか」
「そうだ、知らないのか、新選組の局長が、誤って結界を破ったのだ」
「近藤勇ですか、普通の人間に破れますか」
「いや、たまたま結界を破れる刀を抜いて結界の在る場所で刀を振り、結界が破れたのだ」
「それで、あやかしが」
「そうだ、安倍晴明が閉じ込めたあやかしが世に出た、その親玉が菊一文字でしか斬れない、わしはそれを知り京に来た」
「そうなんですね、何か歴史と違いますね」
「うむ、私は今から出掛ける、東郷さんにはよろしくな」
私は仕方なく外に出て、龍馬を、見送る。
せっかくだから巨椋池を見に行く事にした、昭和には埋め立てられて消えた美しい巨大な池だ。
「おい」
いきなり背後から声をかけられた。
振り向くとイケメンの若い男が立っていた、町人だ。
「はい、道を私に聞いても知りませんよ」
「道ではない、お前は雪女だろう」
「えっ違いますよ」
「私にはわかる、ごまかすな、私は安倍晴明の子孫の安倍与作だ」
「与作さんって、安倍晴明の子孫らしく無いですね」
「うむ、江戸時代になり、我が家は分家で仕方なく百姓になったが、私は与作を名乗っている、本当の名は明かさぬ、今は頼まれてあやかしの退治もする」
「それで私に何用ですか、私を退治したいのですか」
「違う、実は巨椋池のあやかしを退治してほしいと頼まれたが、小舟で池に入ると小舟は木っ端微塵に壊されて、私は池に投げ出された、正義の雪女と見込み手を貸してほしい」
「私が正義と?」
「見ればわかる、お前からは邪気は出ていない、さあ手伝ってくれたら5両やろう」
「5両は、何円ですか?」
「は?」
「いや、すみません、お金が、無いからやります」
「よし、夜を待ち巨椋池に行こうか、そこの茶店で夜を待とう」
「はい、わかりました」
私は与作さんと茶店に入った。
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