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「山の標高は325m、とりとめて峻厳な山というわけではない。
問題はこの山が個人の所有だということ。そしてその所有者、溝部洋蔵がこの山を立ち入り禁止にしているということだ。洋蔵はことさらに用心深い男だ。私有地でもある黒矢鬼山は洋蔵によって監視されているといっていい。洋蔵は、山の麓に豪奢な輸入住宅を建て、たった一人で住んでいる。山に入る道はいくつかあるが、そのいずれにも監視カメラが取り付けられているという有様だ」
田代が広げた地図には山への入り口が5か所記されている。それは順番にAからEまでのアルファベットが振られていた。さらにそれらの入り口の周囲に設置されている監視カメラの位置にも×印がつけられていた。
「……とりわけ洋館に棲む地獄の門番といったところか…」
田代の説明を聞いた佐田が呟いた。
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