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 田代と佐田が溝部洋蔵邸の300m手前に車で到着したのは、まさに日付が変わろうとしている午前零時頃だった。田代は以前にも一度、その周辺を訪れたことがあり、道中迷うことはなかった。  ふたりは洋蔵邸の近くまでやってくると黒い目だし帽を被った。 洋蔵邸にはひとつだけ明かりが灯っていた。洋蔵はどうやらまだ起きているようだ。洋館二階の東角にある部屋だが、恐らく洋蔵の寝室か書斎だろう。  佐田は小さなペンライトを点けると言った。 「よし…じゃ今から黒矢鬼山の監視カメラの配置を確認しておこう。山に登る5つの入り口にはすべて監視カメラが設置されているし、場所によっては有刺鉄線が張り巡らされている。俺の事前の見立てでは、恐らく登山口CとDの間にある斜面から山に入るのがベストだと思う。恐らく、周囲のカメラからは完全に死角になっているし、等高線を見る限り比較的緩やかな斜面になっている。そこから山の中腹近くまで登れば、礼拝堂がある山の頂上付近まで細い登山道がある。たかが300mばかりの低い山だ。なんてことはない」
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