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ヒナを送り出した京はまた本に向かう。その口からボソッとボヤキみたいなクレームが漏れる。
「あんなに煽って大丈夫なのか…」
そこにはもちろん仕事を押し付けた以上の含みがある。
「それは大丈夫。藤崎さんからのアシストがあったみたいだし」
スマホを適当に触りながら至は答えた。何でもない顔をしているが、人前では見せたことのない険しい顔だ。
「顔、怖いよ」
「こういう渋いのもいいんじゃない?」
「あれ?でも、あの人って…」
「藤崎さん?今回の策には無関係なんだけど、世話焼き癖を本領発揮してくれたみたい」
「そっか…」
ふーんと、京。関心なさそうにみせて言葉とは裏腹に何か考え込む。
どれだけ、いくら京が策を練っても結果は同じだ。でもできる限り傷は小さくと思う。その思いは至も京も一緒だ。
「バレンタイン・フォロー隊。今年も俺の名前貸してやるから、しっかりな!京」
「はいはい」
「………」
「………」
「なに?」
「いや、二度目の恋も叶わないなんて…」
京の言葉に至は項垂れる。責めてるわけじゃない。それは至にもわかる。でもけしかけた至としては心苦しい。身体中の酸素がなくなるんじゃないかってぐらい、長く深いため息をつく。
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