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 42区画にはなるほどとても目立つ巨木があった。暗闇をかすかに照らす街燈の傍らで羽根を広げた黒い孔雀のようなその樹はケヤキだろうか。周囲を見渡したが、まだ誰も来ていないようだ。  後藤ならばきっとオンボロの軽自動車でやってくるはずだ。後藤の知り合いたちは、どうやってここに来るのだろう? まさか自転車や徒歩というわけではないだろう。恐らく車で来るに違いない。  俊哉は5分ほどそこに立ちすくんでいた。時計の針は午前12時8分を指している。辺りはシンと静まりかえり、生暖かい風が闇を震わせている。 そのとき、自動車のエンジン音が遠くから響いてきた。闇を照らすふたつのヘッドライトは、やがて俊哉が待つ巨木のそばで止った。
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