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 広大な霊園には舗装された道路が縦横に延びている。そのうちのひとつ、東京八王子線が走る霊園の北側の入り口から霊園の南側にある私鉄駅をつないでいる路線に定期的にバスが走っている。  バスは霊園のほぼ中央を走り、南北をつないでいる。霊園の北側にあるバス停と南側にある表門のバス停を除くと、霊園内にはふたつのバス停がある。  ひとつは霊園中央区画20号地にあるバス停。もうひとつは南区画7号地にあるバス停である。  女性の霊は、南区画7号地のバス停で頻繁に目撃されている。路線バスはJR中央線のK駅から、私鉄のT駅を結んでいる。K駅発のバスは午後9時過ぎで終わるが、このバスに乗った乗客の目撃談が後を絶たない。バスが霊園に入るのがだいたい9時20分頃だ。バスが7号地に到達するとバス停に下を向いた色白の若い女性がぽつんと立っている。  乗客だと思った運転手は当然バス停にバスを停める。ところがさっきまでいたはずの女性は忽然と消え失せているのだ。運転手は「ああ、またか…」といわんばかりにおもむろにバスを発進させる。その刹那、ふたたび若い女性が姿を現し、バスの乗客たちを睨みつけるのだという。  霊園のこの中央道路にはほかにも子供や親子連れ、老婆などの幽霊の目撃談が絶えない。そこは東京都でも5本の指に入る心霊スポットだった。
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