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 とにかく俊哉は支度をして、いやいやながら霊園へと向かうべくマンションの1階へと下りた。彼はスポーツタイプの自転車の鍵を外すとおもむろにそれにまたがった。もう夏も終わりに近づき、辺りには爽やかな風が吹いている。  たしかに真夜中のサイクリングというのもオツなものかもしれない。なんだったら幹線道路沿いのラーメン屋でなにか食って帰ってもいいじゃん……。俊哉はひとりごちた。  月のあかりと街燈をたよりに俊哉は自転車をこぎだした。彼の両頬がすでに秋の風となった空気の流れを感じる。夜風が気持ちいいな…。俊哉は少し気持ちを持ち直した。  霊園までの道は迷うほどのものではない。霊園の北側にあるファミリー・レストランにはたまに行く。平日の夜は比較的空いているし、料理もまずまずだ。  霊園の中央北門に到着すると、そこで俊哉は自転車を停止させた。このまま霊園の42区画を目指そうにも、そこにたどり着くまでの道順が心もとない。後藤から送られてきたマップをスマートフォンで拡大し、ここからの道順を確かめる。
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