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 もう夏も終わりかけた9月下旬のことだった。  都内の大学に通う相模俊哉(さがみとしや)は充満する熱気の中で、ひとりテレビを眺めていた。 「じつに張り合いのない金曜日だ……」 俊哉はひとりごちた。  彼女とは先月別れたばかりだ。きっかけは些細なことだった。アルバイトで貯めた資金でふたり仲良く那須へ旅行にでかけたまではよかった。楽しいはずのふたりだけの一夜に彼らは大喧嘩をした。俊哉の彼女、陽奈子が勝手に彼のスモートフォンを覗いていたのだ。どうやら俊哉の周囲に不審な動きがあったと陽奈子は感じていたようだ。俊哉にはまったく身に覚えがなかった。彼は烈火のごとく怒り、かくして聖なる夜は不毛に終わった。
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