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本編
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小鳥遊耕一くんへ。
突然のことでびっくりさせてしまうかもしれません。
君のことが好きです。
ずっと前から好きでした。
付き合ってください。
3年B組 坂本アキラ
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坂本さんへ
申し訳ないですが、僕は小鳥遊くんではなく、髙梨です。
「タカナシ」違いです。
ラブレターを下駄箱に入れる際は入れ間違いにご注意ください。
P.S.告白成功するといいですね!
3年A組 髙梨幸三
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高梨幸三へ
アタシ坂本じゃなくて板本なんだけど?
あんた自分で「ご注意ください」とか言っといてなんで間違えてんの?
バカじゃないの?
なにが「P.S.告白成功するといいですね!」だっつーの!
気持ち悪っ!
てかこれ、坂本ちゃんのプライベート拡散しちゃってる最悪の行為だからね。
アタシはもちろん誰に言わないけど、まじこういうデリカシーないこと2度とすんな!
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3年B組の坂本さんへ
初めまして。
とつぜんの手紙の束に驚いたと思う。
順番に読んでいってもらえばわかると思うが、手紙の行き違いがあったようだ。
どうも、イタモトという女子が『髙』梨幸三と間違えて俺に手紙を届けてしまったらしい。
俺は高梨だ。『高』の字が違うんだ。
よく間違えられるから気にしてないんだが、坂本さんの手紙を読んでしまったことは申し訳なく思う。
次は正しい送り先に手紙を届けてくれ。
3年A組 高梨仁
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3年A組 高梨仁くんへ
手紙を受け取って驚きました。
私はたしかに3年B組の坂本です。
でも、この手紙の束の最初のラブレターを書いたのは私ではありません。
私の名前は坂本昌子です。
でも、この手紙の差出人は「坂本アキラ」とあります。
私の『昌』の字はアキラと読むことはできますが、私はそのように名乗ることはありませんし、他人からそう呼ばれることもありません。
それに、オカシナことに、うちのクラスに「サカモト」は私ひとりなのです……。
いったいどういうことなのでしょうか?
なんだか恐いので手紙はお返しします。
ここまでのやり取りを拝見して、高梨くんが一番冷静に対処できると思いました。
がんばってください。
3年B組 坂本昌子
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儀同へ
なにやら、学校で奇妙なことが起きているようだ。
詳しくは同封した手紙の束を読んでみてくれ。
どうやら3年B組の坂本昌子さんは「高梨仁くん」と僕を勘違いしたらしい。
きっと『高』の字で間違えないようにと、下の名前である『仁』という字で探してしまったんだろうね。
僕の棚橋仁という名前と似すぎていると高梨くんとは話したことがあるけど、まさかこんな事件に巻き込まれるとは思ってもみなかった。
ただ、この手紙の山を高梨くんに送ったところで、本当の送り主である坂本アキラさんに辿り着けるわけじゃなさそうだ。
そこで、名探偵の出番だ!
君ならこの謎を解けるだろう?
学校にだって君の好物のミステリーは転がっているんだ。
たまには家を出て学校に来ないかい?
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ジンへ
こんなのミステリーなんて言わない。
事件なんて大げさだ。
視野を広げればすぐにわかる。
あと、俺は学校なんて行きたくない。
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私立女子高3年B組 坂本さんへ
初めまして。君を見つけるのにずいぶん時間がかかってしまった。
まさか別の学校の生徒とは思わなかった。
周辺の高校で3年B組の坂本亜紀良という女子は君しかいなかった。
誤解しないで欲しいんだが、僕はストーカーとかそういう危ないやつじゃない。
多少、人より好奇心が強いところは認めるけどね。
君の手紙が紆余曲折を経て戻ってきた経緯は、同封してある手紙のやり取りで確認して欲しい。
遅くなって申し訳ない。
天の川高校 3年A組 棚橋仁
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イタモっちゃんへ
やっほー☆
手紙なんて小学生の時以来で、なんか新鮮。
てか、照れる。
変な手紙が届いたんだけど、イタモっちゃんの学校の男子が書いたみたい。
全然身に覚えのないことが書かれててドン引きした。
てか、この棚橋仁ってやつの文章がキモイ。
なんでメールとかラインじゃなくて、下駄箱に手紙出してるのかわかんないけど、なんかウケる。
こういうの、イタモっちゃんの学校で流行ってんの?
とりあえず、この棚橋ってやつ、ヤっちゃてよ。
今度クレープ驕るからさ。
駅前の新しいお店、一緒に行ってみよーよ。
あ、返信はラインでいいからね♪
Akiraより♡
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棚橋仁くんへ
まさかまた私のもとにこの手紙が戻って来るとは思いませんでした。
どうやら私立女子高の坂本亜紀良さんは、イタモトさんの下駄箱と間違えて私の下駄箱に手紙を入れてしまったようです。
すぐに高梨仁くんに返そうと思ったのですが、つい内容が気になってしまって読んでしまいました。
今は棚橋くんと儀同くんが協力して最初の坂本アキラさんを探しているみたいですね。
私にはサッパリわかりませんが、もし真実が明らかなになったら、よかったら教えて欲しいです。
影ながら応援しています。
3年B組 坂本昌子
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棚橋へ
坂本昌子はまた間違えたらしい。
どうやら彼女はおっちょこちょいなところがあるようだ。
落ち着いた雰囲気の女子という印象だったけど、人は見かけによらないな。
俺も手紙に目を通した。
坂本アキラさんの正体は気になるが、考えてもわからなかった。
ここは棚橋と儀同に任せるしかなさそうだ。
儀同ってC組のやつだよな。
ずっと学校来てないから名前と顔しか知らないけど、もし学校に来たら俺にも紹介してくれよ。
事件が解決したら聞かせてくれ。
がんばれよ。
高梨仁
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儀同へ
読んでもらえればわかるだろうが、面倒なことになった。
君は知らないだろうが、イタモっちゃんこと板本さんは、うちの学校の女子の最大派閥のボスだ。
女子高の坂本亜紀良さんからなにか吹き込まれたらしい。
板本さんのグループは僕のことを敵視している。
針の筵だ。
3年A組の髙梨幸三くんも同様の被害を受けているようだ。
結束した女子のパワーには圧倒されるね……。
ところで、結局、最初の送り主である坂本アキラさんには辿り着けなかった。
君でも推理が外れることがあるんだな。
B組の坂本昌子さんや高梨仁くんは僕らに期待してるみたいだけど、僕はもうこの件は忘れようと思う。
『好奇心は猫を殺す』って外国のことわざがあるけど、僕は少し余計なことに首を突っ込み過ぎたみたいだ。
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ジンへ
ジンはいつも50点だ。
途中で考えるのをやめてしまうから真相に辿り着けない。
『他の学校の生徒』というピースだけでは不十分だった。
恐らく、すでに事態は解決している。
だから、今回は特別に教える。
坂本アキラは『男』だ。
そもそも、途中で誰かが小鳥遊耕一に直接手紙を届けていればこんなカオスは生まれなかった。
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儀同へ
手紙を送り届けようと、坂本アキラくんの学校を訪ねてきた。
すると、驚くことに、校門で小鳥遊耕一くんが待っていた。
様子を見ていた感じ、どうやら二人の気持ちは通じ合っているようだ。
仲良くふたりで駅前でクレープを食べた後、カラオケボックスに消えて行ったよ。
もうこの手紙の束も不要になってしまった。
ラブレターが無関係な人に読まれていた、なんて知ったら坂本アキラくんもショックを受けるだろうからね。
話は変わるが、一言だけ君に言っておきたい。
前の手紙の最後にあった『そもそも、誰かが小鳥遊耕一に手紙を届けていれば』っていうのは、違うと思うんだ。
恋愛ってのはあくまで当事者同士の気持ちの繋がりだ。告白の場面に脇役は必要ないと、僕は思うよ。
とりあえず、今回のミステリーはこれで終わりだ。
また何かあったら君に伝えるけど、そろそろ学校に出てきたらどうだい?
きっと君が思うほど退屈じゃない。高梨仁くんも会って話してみたいってさ。
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ジンへ
どうして俺に手紙を出して終わるんだ。
俺はこんな手紙の束なんていらない。
ジンが処分してくれ。
俺も一言だけ言わせてもらう。
『好奇心は猫を殺す』
ストーカーはやめとけ。
学校には行かない。
ただ、針の筵になっているジンの姿は一見の価値がありそうだ。
でもやっぱり学校には行かない。
あと、俺が言うのも変な話だけど、同じ学校にいるなら手紙なんて使わずに面と向かって話せよ。
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