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00 プロローグ
陽が傾き始めて、室内は薄暗くなっていた。
音楽室にある防音の個室は、窓が小さいから更に暗い。
それでも、床に押さえつけている相手の顔を堪能するには十分な明るさはある。
綺麗な顔が、恐怖と屈辱に歪んでいて、なかなか良い感じだ。
「んっ…んっ……ぁ」
こちらの動きに合わせるように漏れる声が、次第に艶めいていく手応えで余計に止まらなくなる。
あの日、初めて正面から顔を見た時に感じた胸騒ぎは、高揚感に拍車を掛けて、ゆっくりと味わう余裕を失くしていた。
いつもきちんとしている印象の同級生が、今は涙と涎を垂れ流して俺の腰の動きに翻弄されるだけの人形のようになっている。
「那弦」
名を呼ぶと、無理やり繋げた身体が強張った。
俺の声が聞こえているのだと、若干心が踊る。
「う…っ」
顔を隠そうとする腕を掴んで、怯えた表情を晒してやる。
ああ。
やっぱり好みの顔だ。
「も…やめ、て」
力無く懇願する声は、俺の耳には都合良く逆の意味に聞こえる。
もっともっと奥へと身体を進めると、組み敷いた白い喉が仰け反った。
「っ…! ……ぁ、っ!」
息を吸うとか、吐くとか、悲鳴を上げるとか、そんな簡単な事すらできずに、ただ悶えている様はかなり煽られる。
「…や……っ!」
綺麗なものを踏み付けている感覚が、全身に言い知れぬ高揚を走らせた。
ずっとこうしていたい、と馬鹿げた考えが過ってつい乱暴になる。
気持ち良い事をしている筈なのに、どうしてこうも胸糞悪いのか。
その理由は、きっともう、永遠に分からない。
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