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やはり。やはりそうだった。どうしようもないショックと落胆を抑え込みながら、俺はなんとか、
「そうです……スライです」とだけ答えた。
目の前の男子は「そうかあ……よかったあ!」と声をはずませた。
「あの、フィリルです、はじめまして」
だよね。わかっている。わかっていたがこれで完全に確定だ。
わかっていた。わかってはいたんだ。俺なんかのことを好きになってくれる女の子がいるわけはない、と。
フィリルの中身が男ではないかと、何十回、何百回と頭をよぎった。そのたびに否定を続けて、女である、女のはず、と自分を納得させ続けてきた。しかし現実はこのとおりだ。
フィリルとここまで過ごしてきた日々の思い出が走馬灯のように頭の中を駆け抜けていく。
俺の嫁。俺の嫁が。
ここまで0.6秒。人間の頭とは一瞬で色々なことを考えられるものだな。などとどうでもいいことを思う。
現実のフィリルを直視する。フィリル君は身長160㎝そこそこの小柄な男子で、清潔感のある格好をしている。身長が俺より低かったのが救いだ。これで身長2m近い大男とか出てきたらやり切れない。我ながらよくわからない基準ではあるが。
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