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黙っている俺を見て、フィリルが「すいません」と言った。
「えっ、なにが?」と俺は答える。
「がっかりさせましたよね……僕が男で」
「いや……?」
ズバリがっかりしたが、そんなことは言えない。
「そんなことはないですよ! あっ、遅くなりました、はじめましてフィリルさん」
あいさつもしていなかったのに気づいて、俺はバタバタとあいさつをして頭を下げた。
フィリルが男だったのにがっかりしたのは事実だが、それを理由にテンションを下げるのも変な話だろう。そもそも俺たちはお互いの本当の性別の話もしたことはないのだ。
現実のフィリルを受け入れて、なんとかこの時間をやり過ごそう、と俺は決意をした。
「どうします?」
フィリルが聞いてくる。
「そうですね……とりあえずどこかに行きましょうか」
とは言ったものの、俺は気の利いた店などなにも知らない。行くあてもなく、とりあえずにぎわっている繁華街のほうへと二人で向かった。
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