君想いし文花

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 そこで知ったのだが、どうやら花には一つ一つ意味が含まれているそうだ。それを花言葉というらしい。どこかでその言葉を耳にしたことはあったが、詳しくは知らなかったから僕は少しだけ興味を持った。  でも知識をただ、吸収するだけでは意味が無い。だから僕はこれを君にも教えてあげれば良いじゃないかと考えたのだ。君は好奇心の旺盛な男だし、知識は決して無駄にはならないと言っていただろう。  だからこの花を同封しておこうと思う。カモミールと言って、お茶にできる草だそうだ。白くて小さな花びらが可愛いらしいだろう。  花言葉は「逆行に耐える」という意味らしい。今の僕の状況にぴったりだとは思わないかい。看護婦もそういう意味を込めて植えたのかもしれないな。  僕も君が寂しがらないように、早く身体を元気にしようと思う。  温かい季候にはなってきたが、まだ夜は冷え込む。君も用心したまえ。       大正十四年五年    風戸 康雄
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