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あと一か月はあると思ってたのに……そう思えるぐらい、あっという間に社員旅行の日がきた。
本当に社会人になってから、時間が経つのが早い気がする。誰か私の時計だけ早回しにしてるんじゃないのかと、そんなことを思ってしまうぐらいには一日や一か月が早く感じる。
予定時間より早めに集合場所に行くと、もう既に沢山の社員が集まっていた。全社員で行くには多すぎるから何グループかに部署ごとに分けてるけど、それでも多い。今回初めて参加する私はその人数に圧倒されてしまった。
「松嶋先輩、おはようございます」
「今年は参加するのね」
「あ、おはようございます。よろしくお願いします」
仲良くしてくれている鳴海さんと七瀬先輩が声をかけてくれて、二人と合流する。
「仕事じゃないんだから」
「そうですよ先輩。今日は楽しまないと」
「確かにそうだね」
三人で笑い合っていると、バスがやってきて順番に乗り込んでいく。座席は2人ずつだから、先輩達の後ろに一人で座ることにした。
続々と乗り込んでくるけど、私の隣は空席のまま。鞄でも置いとこうかなと思っていると、中西課長が乗り込んでくるのが見えた。
「結構一杯だな。お? 松嶋隣空いてるのか?」
「え?あ、はい」
「隣いいか?」
「ど、どうぞ」
「ありがと」
まさか課長が隣に座ることになるなんて……
スーツ姿しか見たことがない課長のいつもと違うラフな姿に、知らない男の人が隣にいるようで少し緊張してしまう。
「……松嶋のそういう服装見るの初めてだな」
「そうですか……?」
確かに会社にはこういうワンピースとかは着て行かないかもしれない。どうしてもかっちりしたパンツスタイルが多くなってしまうから。
「なんかちょっと緊張する」
少し照れたように言う課長に戸惑ってしまう。
「……私もです。課長のそういうラフな格好見たことないので、少し緊張してます」
「……そうか。同じだな」
……ああもう、顔が熱い。何言ってんの私。そんな事言ったら余計に緊張するのに。
左側から課長の視線を感じてはいるけど、恥ずかしくて全然そちらが見られないままバスの旅は始まった。
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