20話

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「じゃあ、俺達はこれで帰るから」 「お世話になりました」 「将悟、具体的に決まったらすぐに連絡しろよ」 「分かってる」 帰る日の朝、玄関先で将悟さんがお義兄さんと話をしていると、お義父さんが私の傍にやってきた。 「琴音さん」 「はい」 「こんな田舎で疲れたんじゃないかい」 「そんなことないですよ」 「そうかい。それならいいんだが……気疲れしたんじゃないかと思ってな」 「皆さんとても気さくで優しくて、楽しかったです」 「それなら良かった。……琴音さん、将悟のことよろしく頼んだよ。あいつは体はデカいが弱い部分がある。支えてやってくれ」 「……はい」 滞在中にお義父さんと話をすることはあまりなかったけど、気にかけてくれてたんだな。将悟さんの優しい所は、お義父さん譲りなのかもしれない。支えてやってくれという言葉に、すごく温かい気持ちになった。 「琴音、そろそろ行くぞ」 「はい」 「琴音さん、また帰っておいでね」 「……はい。ありがとうございました」 当たり前のように帰っておいでと言ってくれるのがすごく嬉しい。 少しづつ遠ざかっていく中、見えなくなるまでずっと笑顔で見送ってくれる、近い将来家族になる人達。その日が来るのを楽しみにしながら、私と将悟さんは帰宅した。
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