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お昼ご飯を食べ終えて外に出ると、バスの出発までまだ時間があるみたいで、煙草を吸ったり各々の過ごし方をしている社員が多い。
「私ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
「あ、私も行きます! 松嶋先輩は?」
「私は大丈夫。二人で行ってきて」
2人を見送ってからバスに乗り込む。まだ誰も戻ってきていなくて一人きり。手持無沙汰で窓からボーッと外を眺めていると、誰かが乗り込んできた気配がする。目線を入り口に向けると、そこに居るのは課長だった。気まずさに、軽く会釈だけして視線を逸らす。
「……怒ってるのか?」
「え……?」
困ったような課長の表情を見て、こっちが動揺してしまう。
さっきは確かにちょっとムッとしたんだけど、今はただ気まずいだけ。
「課長に揶揄われてると思ったので……」
「やっぱりそういうことか。……笑って悪かった。でも別に揶揄ったわけじゃない」
「じゃあ何で笑って……」
「お前が可愛くて思わずな」
「っ……!」
可愛い……?!
「やっぱり揶揄ってますよね……!?」
「だから揶揄ってない。本気で言ってる」
「へ……?」
「松嶋は、今恋人いるのか?」
「いません、けど……?」
「そうか」
課長が何か考えるように黙り込んでいる。
今の質問の意味は何なんだろう……?課長の横顔を見つめながら、心臓が早鐘を打ち始めていた。
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