第1章 44ブレスレット

8/13
前へ
/254ページ
次へ
 ミノリは頷いた。彼女が手を差し伸べてくれるのはここまでみたい。職員室のドアを見ると、それはまるで鋼の門のようにがっしりと、そして重々しいものに見えた。大丈夫。ミノリだっているし…  ドアを引くと、ゆっくりと中が見えた。  ああ、先生が何人もいた。今となっては、1学年2~3クラスしかない小さな学校だけど、先生の中には名前を知らない人もいる。  呆然と職員室を見回していると聞き覚えのある声が聞こえた。 「あら、本田さんに秋林さん」 『あの…』  私はそう言いながら上目遣いになっていた。ミノリとはある程度話せるのだけど、どうしても話慣れていない相手だと、言い淀んだり、しどろもどろになってしまう。  石田先生はにっこりと笑った。 「どうしたの?」  ああ、まだうら若い先生が笑うと、まるで保健室の先生が笑ったかのように安心する。おかげで少しだけ肩の力が抜けた。 『あの、文芸部に、仮入部…したいんですけど…』  石田先生はきょとんとしたまま、私を眺めていた。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加