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母とありさは、外へ出て誘導し始める。しかし、運転できないこの二人の合図では、混乱するばかりだ。
「それ、ストップか、前進か? 何だかさっぱりわからないよ」
雪がひどくなった。
しまいには、母とありさの指示が反対に出てしまい、親子三人、みじめな表情でうなだれた。
まあ、なんという悲しいクリスマス・イヴになってしまったの。まるでわたしたち、無能力者ね。
ありさはぼんやりと、降りしきる夜の雪の中に立っていた。もう疲れて、寒くて、何も考えられなかった。どれくらいの時間が経っていたのかもわからなかった。
「代わりましょう」
声がする。幻覚ね。わたしは、気を失っているのかしら?
「代わりますよ。わたしでよかったら」
暗闇の中にだれか立っていた。やさしい、低い声だった。
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