【1】side Ogami……出会い

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【1】side Ogami……出会い

 ディーリングルームの朝は早い。  大手証券会社のグローバルマーケット部門に所属している大神波(おおがみなみ)は日本で一番広いと言われる取引(ディール)専用のフロアに今日も足を踏み入れた。 「おはようございます、統括」 「おはよう」 「今日も早いですね。お疲れ様です」  口々に朝の挨拶を交わしているのは若手の為替ディーラーたちだ。地球上で最も早く為替の取引が始まるのはウェリントン市場だが、その後、シドニー市場が開き、続いて東京市場がオープンする。為替ディーラーたちはそのシドニー市場がオープンする時間に間に合うよう、午前七時前にはフロアに入る。この巨大なディーリングルームで二百名を超えるディーラーたちが日々、株や為替、債券といった金融商品の取引を行っているのだ。  大神はずらりと並んだディスプレイの海を抜け、自分の席に着いた。通常、一人のディーラーが使うディスプレイは六枚程度だが、大神が使うディスプレイは全部で十二枚――特別仕様のデスクだ。  大神はわずか三十五歳ながらグローバルマーケット部門の部長を務めている。この市場部では株式、為替、国内債券、海外債権の取引を行っており各セクションに課長がいるが、皆、大神よりも年上だった。この若さで大神が統括部長に抜擢されたのには理由があった。
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