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【4】side Amane……恋のはじまり
今日は夢のような一日だった。
部屋に帰ってきた今もまだ夢から覚めやらない。
仕事を終えてエントランスを出ようとした所で大神から声を掛けられた。その瞬間、周の心臓は弾けた。なぜか同じ場所に立っている大神の姿が眩しく輝いて見えて、驚きと緊張と嬉しさで気持ちがごっちゃになってしまった。大神はそんな挙動不審な周を笑ったりせず、優しく接してくれた。
周は大神が周囲から変に思われないか逆に心配になった。自分はくたびれたグレーのパーカーに黒のデニム姿で、どこから見ても学生かフリーターのようだった。反対に大神は皺一つないスーツ姿で濃いブルーのYシャツと艶のある水色のネクタイが似合っていて凄くカッコよかった。そして、いつものようにいい匂いがした。
連れて行かれたお店もお洒落で見たことのないような食べ物が出てきた。どれも美味しくて夢中になって食べた。デザートまで平らげた時、自分ばかりが食べていたことに気づいた。大神が自分のために料理を注文してくれたことが分かって胸が熱くなった。
――なんであんなに優しいんだろう。
その理由が分からない。
けれど、無性に嬉しかった。
食事を終えると連絡先を聞かれ、SNSのアカウントを交換した。帰り際にはタクシーを停めてくれて、周が自宅の住所を告げるとお金を払ってドアまで閉めてくれた。窓越しに手を振られて周も夢中で振り返した。
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