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ベッドの上に横たわってもう一度、今日あったことを思い返してみる。
大神が優しくてカッコよかった。
溜息がこぼれる。
――このことをソーシャルワーカーの村上に話そうか。
そう思ってすぐにやめた。村上には大神のことを話さない方がいい気がした。今までいいことがあったり、友達ができたりすると全て村上に報告してきたが、何も報告は義務ではないのだ。話さないことがあっても構わない。嘘をつくわけではないのだ。
そんな言い訳じみたことを考えて苦笑する。
どうしたのだろう。まるで悪いことをしているみたいだ。そうではないのだと自分に言い聞かせる。色んな感情がない交ぜになって気持ちが落ち着かない。ドキドキとソワソワが同時に襲ってくる。
――でも、やっぱり大神さんのことは黙っていよう。
周がそう思う理由の一つに、ある種の後ろめたさがあった。
周はこれまで誰とも恋愛をしたことがなかった。他人に興味がなく、性的にも未成熟で誰かと付き合いたいと思うこともなかった。それなのに大神を見ていると心臓がドキドキする。目を合わせられないのにずっと見ていたいと思う。理由は分からなかったが、大神という男に強く惹かれている気がした。
憧れだろうか。
自分も本当はああなりたいのかもしれない。大神は優しくてカッコよくて話も面白い。大人の男性に対する憧れが表に出たのだと、周はそう思った。
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