【4】side Amane……恋のはじまり

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 そうだ、と思って店員に声を掛けた。SNSでの利用が可能な水槽を訊いて、その写真を撮った。今、駅前のペットショップに来ています、とメッセージをつけて画像を大神に送信する。すぐに既読になった。  ――綺麗だね。これは熱帯魚?   そうです。ゴールデン・デルモゲニーっていう淡水魚です。  ――沖縄にいるダツっていう魚に似てるね。   あ、そうなんです。ダツと同じ種類の魚なんです。  ――ダツは危険だけど、これなら家で飼えそうだな。   大神さんも魚好きですか?  ――飼ったことはないけど、一度、飼ってみたいと思う。魚はもちろん好きだよ。   そうなんですね。僕と一緒でなんだか嬉しいです。  速いスピードで返信が来る。大神が喜んでくれているような気がして、画像を送ってよかったと思った。ひと通りやり取りを終えると、周は熱帯魚のコーナーから金魚の水槽がある場所へ向かった。周はしばらくの間、金魚を眺め続けた。  餌を買って店を出た所でスマホが鳴った。見ると大神からで近くまで車で来ているという。指定された大通りの交差点へ向かうと、車の傍に立っている大神の姿が見えた。周に気づいた大神は軽く右手を上げた。  やっぱりカッコいいなと思う。  今日はスーツ姿ではなく細身のパンツにラフなジャケットを合わせていた。左手をポケットに入れたまま車にもたれ掛かるような仕草でこちらを見ている。周が駆け寄るといい子だと言うように頭の後ろを撫でてくれた。  体温がじわりと上がる。  犬でもないのにもっと撫でられたいと思ってしまった。恥ずかしいのに、大神の大きな手の感触が温かくてずっとこうしていたくなる。それくらい気持ちがよかった。
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