【4】side Amane……恋のはじまり

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「どこか行きたい所、ある?」 「……特にないです」 「魚が好きなら海も好きなの? 海に行こうか?」 「海……」  周がぼんやりすると大神が微笑んだ。 「さすがに今から熱帯魚のいる沖縄の海には連れて行けないけど、そうでなければ行けるよ。街から見える海がいい? それとも砂浜のある海がいいかな」 「波が来る様子を見たい……です」 「よし、決まりだ。車に乗って」  周は促されて車の助手席に乗った。中に入ると本物の革の匂いがした。周は車に詳しくないので車種までは分からなかったが、高い車であることは分かった。 「大神さんはエリートなんですね」 「どうしてそう思う?」 「なんでも知ってるし、なんでもできる。それだけじゃなくて……なんでも持ってる。僕には大神さんが完璧な人間に見えます」 「この世に完璧な人間なんていないよ。それに俺は完璧じゃない。君より少し大人なだけだ」  そうなのだろうか。 「大神さんはどんな仕事をしてるんですか? 名刺を見てもよく分からなくて……」 「証券ディーラーのこと?」 「はい」 「簡単に言うと会社の金で株や為替、債券の取引をして収益を上げているプロの投資家だ。自己資金で取引をしている個人投資家ではなく、顧客の金で取引をしているトレーダーでもなく、ただ会社を儲けさせるためにいるのが俺たち証券ディーラーだ」 「会社を儲けさせる……」
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