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彼女は黒板に彼女の名前を書き始める。
陽氷見 桜
と
「 ようひみ さくらです。よろしくお願いします 」
彼女が話し終えると拍車が起こった。
それは何も特徴がない、
ありふれた自己紹介だったけれど
僕は
僕のどこかが動いた気がした。
「 え~そうだな。陽氷見は忍の横の席に座ってくれ 」
彼女は言われるがままに静かに歩き、席に着いた。
彼女の顔は無表情だった。
だけど、
僕は見とれずにはいられなかった。
あの時の少女が目の前にいる。
その驚きと喜びが僕の心を躍らせる。
僕には、
みんなの話し声も、
もう最近あまり聞こえなかった蝉の声も、
聞こえなかった。
聞こえたのは僕の激しく高鳴る胸の音だけだった。
放課後、クラスメイト全員が彼女のもとに集まる。
もちろん僕も含めて。
会話の内容は、
「 どこから来たの~? 」
だとか
「 ライン交換しよ~ 」
とかばかりだ。
みんなが会話を楽しむ中、
僕は微笑むばかりで黙り込んでいると
クラスの一人の 飛島 飛鳥 〈 とびしま あすか 〉 が
僕の背中をどんとたたいて
「 大丈夫か? 」
そう笑顔で励ましてくれた
いや、別に落ち込んでいたわけではないのだけど。。。
そんな気遣いをしてくれる彼女は、
番長みたいな
男勝りな性格で
それでいて優しく、成績優秀
まぁいわゆる良い人だ。
この前なんて中学で起こっていたいじめの主犯格をげんこつでたたいて
二人とも指導室行きになっていた。
そしてついたあだ名が半番長
性格と成績が5:5のためだった
ぼくは、
「 大丈夫です 」
そう笑い返す。
すると、
一瞬彼女の顔が赤くなった気がした。
下校時間を知らせるベルが鳴り
俺たちの間の静寂を破るように中学生たちが廊下を
ドタバタドタバタ走り去る。
みんなが帰りの支度をはじめ
あの子がこっちを見ているのが見えた
少し驚いたが
俺も帰り支度を始めようとする。
半番長が何かを言いかけたような気がするけれど
俺は無視をした、
いや
してしまった。
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