窓辺から少女は何を見る

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窓辺から少女は何を見る

 少女はいつも空を眺めていました。開け放たれることのない二階の部屋の格子窓から眺める空。窓越しに光が優しく包みこんでくれたり、大粒の雨が窓をわらんばかりに叩いたり。空はいろんな顔を見せてくれます。けっしてあきることはありませんでした。今年七歳になる少女は、今よりも幼いときから、ずっと窓越しに空を眺めてきました。  そんな少女の目に、最近不思議なものが見え始めました。晴れた日の、どんな絵の具よりも綺麗な青に浮かぶ白い雲。その雲の端から、たまに耳のとがった青い髪の少年が顔をのぞかせているのです。もちろん、雲が近くないと見ることはできないし、晴れた日だけに見える顔。つり目を細めてニカッと笑っていたり、雲の端から足を投げ出してぶらぶらしていたり。なによりも不思議だったのは、遠くにあって人間の目では認識できないはずの姿形が、まるで近くで見るように認識できたことでした。  だけれど、そんな不思議は沸き上がる興味の前では些末なことでした。  いくつだろう? 同じ歳くらいかしら? 話せたらいいのになあ。  身体が弱く、学校にもいけない少女には友達もいませんでした。  少女はお父さんやお母さんにも伝えましたが、信じてはもらえませんでした。錯覚だよと言われては、少女は何も返せません。そんなものが見えるはずがないことくらい、七歳になる少女にもわかっていたからです。
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