確かなもの

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 少年は棒をポケットにしまい、紙飛行機を胸元に持ってきます。  なんて書いてあるんだろう? 跳ねあがりそうな胸の鼓動を感じつつ、少年はゆっくりと、少女の想いがこもった一折一折をほどいていきます。  最初に『よろしくね。』と見えました。そのまま折れた紙を左上に戻すと、『ジュークくん。はじめ』まで読めます。  自分の名前が見えた瞬間、「ジュークくん」と自然に口にしていました。  少年はゆっくりと最後の折れを右上に捲り戻しました。  紙飛行機からノートの一枚に戻った紙を、少年は黙ってみつめました。 「ジュークくん。はじめまして。アキラです。よろしくね」  ゆっくりと、また自然と口にしていました。 「アキラ、アキラかあ」  初めて知る少女の名前を、大切な宝物の名前を口にするように、大事に二回呟きました。  少年と少女は想いの糸でつながることができたのです。糸の先には少女が。糸の先には少年が確かにいるのです。  
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