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雲の中から少年は何を見る
少年はいつも雲の中から下界を眺めていました。緑になったり、赤茶けたり、この雲のように白くなったりする山。そして、夜になると頭上の星よりも輝きだす街並み。けっしてあきることはありませんでした。今年いくつになるかも忘れた少年は、生まれたときからずっと、風に流される雲の中から下界を眺めてきました。
そんな少年は最近あることに気がつきました。下界からこちらを見つめる少女を見つけたのです。色白で、まっすぐな黒髪を肩より少し長めにたらし、大きなくりっとした目の中の優しげな黒い瞳。そんな少女が窓越しにずっと見ているのです。
「えっ!? あの子、見えるのかなあ」
沸き上がる興味が少年の身体を満たしていきます。
いくつだろう? 同じ歳くらいだろうか? 話せたらいいのになあ。
雲に乗って旅をする少年は、下界の人間という生き物の中に友達はもちろんいません。
少年はお父さんとお母さんにも話しましたが、信じてもらえませんでした。そんなわけないだろ。人間に私達は見えないよ。そう言われては、少年は何も言い返せません。人間に自分達が見えないことくらい、生まれたときから旅する少年にもわかっていました。
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