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『てがみをかみひこうきにしてとばして』
浮かぶ文字を読み取った少女は、いくばくも不思議がることなく、即座に立ち上がりました。頷くことも忘れて、窓の右側にある机へと歩みよります。黒髪が小さな風を纏って遅れて少女の背中に収まりました。
少女は引き出しを開けると、学習帳を取りだし、中程を開いて卓上の定規を当てました。定規にそわせて、サーッと一枚切り取ります。ペン立の鉛筆を握ると、もう頭に思いついていた文字を丁寧に書きました。
『ジュークくん。はじめまして。アキラです。よろしくね。』
長い文はいりません。きっとこれから何度でもやり取りできるのだから。少女はそんな想いに駆られながら、また丁寧に紙飛行機を折っていきます。一折、一折、想いを込めて。一折、一折、届けと願いながら。
折上がった紙飛行機を右手の親指と人差し指でそっと摘まんで、自分の目線に掲げます。少女は自然と微笑んでいました。
ハッと我に返った少女は、急いで窓に向かいます。
両開きの格子窓の真ん中にある下ろし錠を上げて、左手でそっと押し開けました。
少女の想いの風に押されるように、ゆっくりと窓が広がりました。
白い雲と青い空のコントラストが醸し出すような色の付いた匂いが鼻先に届いてきます。
少女はおもいっきりの笑顔を少年に向けて、そして、ゆっくりと紙飛行機を振りました。
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