確かなもの

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 少女は口を押さえていた両手を離し、「わああっ!」と、音のない驚きを発します。  ギュンと舞い上がる紙飛行機は少女の目線まで昇り、その先にある少年の「やった!」といわんばかりの笑顔と結びつきました。  紙飛行機はふらつくこともなく、少女と少年をつなぐ糸を辿るように飛び昇ります。  何も邪魔するものはありません。二人の距離ですら、想いの乗った紙飛行機には関係ありません。二人が互いの存在を認識した時に、すでに通じ合うことは決まったかのように。  キキはぶれることなく吹き昇ります。大好きな雲の綿菓子のために。そして、大好きな少年の願いに応えるために。 「キキ、早く! 早く!」  少年はもどかしい距離を手繰り寄せるように何回も手招きしました。  キキはそれに応じるように、さらにスピードをあげます。  少女はあっという間に遠ざかっていく紙飛行機を見上げて、「いけ! いけ!」と必死に願いました。  
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