贈り物

1/12
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

贈り物

毎年、この季節になると必ず、俺の自宅にお中元が送られてくる。 中身はサーロインステーキ用のブロック肉だ。 差出人の名前は野球部の1人からだった。 俺はかつて、ある高校の野球部の監督を務めていた。 弱小だった野球部を一から鍛え直し、2年で県内トップ5まで上り詰め、甲子園出場を5年連続導いてあげた。 今は違う高校で監督をしているがあそこにいた頃が俺の絶頂期で一番、楽しかった時期だ。 お中元に書かれた箱を見る度に、あの頃を思い出す。 毎日、俺の厳しい訓練に必死で耐え抜き、野球部員全員と一緒に勝利の喜びを分かち合ったあの頃…… そして、生徒達のマドンナ的存在だった女子マネージャー。 ――あの子……俺に夢中だったよなぁ 俺はいつもあの頃の事を思い出しながら、貰った肉を焼き、思い出の味を噛み締めながらじっくりと味わった。 とても美味しい肉に俺の腹はすぐに満たされた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!