贈り物

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「中々の傑作だろ?」 父親は俺に向かってほくそ笑むと、息子の1人に近づき、肩を置いた。 「長男のこいつはな。優秀な外科医なんだが人の身体を切る時が一番、興奮するんだと」 そう言うと、次は母親の方へと近づくと、後ろから彼女を抱きしめた。 「妻は芸術家でな。人の苦しむ様を絵に描いたり、石膏で制作したりしてるんだ。特に涙ながらに命乞いをする人間の姿を見てると並々ならぬ幸福を味わうんだと」 そして、母親から離れると今度は俺の方へと戻り、再び頭を掴んだ。 「俺は料理を作るのが好きだ。作った事のない料理を美味しく作れると、紛れのない高揚感を覚える」 「父さん、俺を忘れてるよ」 もう1人の男がふてくされながら、父親に訴えた。 「分かってる。お前はあとだ。順序よく話してるんだ」 父親は振り向き、息子を嗜むと2人の俺の方へと顔を向けた。 「変な家族だろ?自分達でも分かってる。よくよく考えたら、娘が一番、まともだったよなぁ。でもな、バラバラな性癖を持つ俺達、家族でも1つだけ共通点がある」 父親は俺から一歩二歩下がると、ニコリと笑って家族を代表するかのように告白した。 「人を食べるのが、何より大好きなんだ」
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