贈り物

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父親はリモコンを手にしながら、映像を切り替えた。 映像はまたもや、若い男でこの男にも見覚えがあった。 「な、なぁ、わ、悪かったよ。謝るからさぁ、た、頼むよぉ、お、俺、やっと………プロ野球選手になれたんだ。こ、これまで努力が実ったんだ。それなのに…………ここで終わるわけには………へっ?………ぎゃぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁっ!!!!!」 更に父親は映像を切り替えた。 これも同じ見覚えのある若い男で涙ながらに命乞いをしていた。 「許して下さい………俺は………もうすぐ………父親になります…………生まれて来る子供に恥じないように、あなたの娘さんにした事を世間に話します。だから………だから………ああっ!………あ……頭を………たべ………たべてるふふふぅぅぅ…………」 その後も、男達の無残な姿を見せられ続けた。 顔いっぱいに涙を流しながら命乞いをし、これからの未来を語り、それができない無念がおびただしい悲鳴と流れる血と共に消えていった。 一方の父親は俺の隣で映像に指さしながら、料理の解説をしていった。 「こいつは心臓を使った。こいつには腸を使ってソーセージを作ったなぁ……ああ、こいつこいつ。こいつは当初、腎臓を使う予定だったんだが、息子が止めてな。腎臓にしこりがあったから脳みそに切り替えたんだ。ソテーにしたがあれは美味かったなぁ………おいっ」 父親は俺の後頭部を軽く叩き、前に出て尋ねた。 「もう分かるだろ?俺達の食卓に飾られたこいつらが一体、誰なのか」 映像が中盤に差し掛かった時、漸く全てが分かった。 どれも全て見覚えのある若い男達……… こいつら全員……… 「野球部の部員達か?」
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