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昼時。社員食堂で指間瀬葉子と青狩陽介が向かい合って話している。
ショートヘアに細身のパンツスーツの葉子はサラダと焼き魚定食ご飯なし。
ラグビー選手のような体格の陽介はハンバーグランチライス大盛り。
「この前紹介してくれた、営業の代久留君」
「ああ、数彦?」
「押しが強い。食事に誘われ続けてる」
「行かないのか?」
葉子はサラダにフォークを突き立てる。
「行きはするけど」
「仲良くしてやってくれ。粘着質だけど良い奴だから」
陽介は無造作に箸で掴み上げたハンバーグにかぶり付く。
「それフォローしてる?」
葉子は丁寧に焼き魚の身をほぐしていく。
「仕事でも粘り強いから成績トップなんだろうな」
ふうん、と興味なさげに葉子は箸を進める。
陽介は飲み込むようにご飯をかき込む。
食べ終わった葉子はバッグから小さいタッパを取り出す。容器にはヨーグルトが入っている。
「それ、カスピ海ヨーグルトか」
「そ、陽介おすすめのね」
抵抗感を楽しむように、粘り気のあるヨーグルトをかき混ぜる。
「ハチミツかけないんだな」
「このままでもおいしいし、ご飯抜いた意味ないじゃん」
葉子は口の中でまったり感を堪能する。今までよく食べていた、ブルガリアのあっさりした滑らかさとは全く違う。葉子にとって新しくて刺激的でクセになる味だ。
「うまいよな」
にっこりした陽介のネクタイに、ハンバーグのソースが飛んでいる。
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