ウィスキーボンボン

　秋も半ばを過ぎて、やや色褪せた芝生が敷き詰められた東西の庭園の周りには幾重にも花弁が重なった薔薇の血の色を思わす赤黒い花や、心が洗われるような純白の花や、気品を漂わすピンクの花や、雌蕊までが花のような杜鵑草の紫の斑模様の入った白い花や、皆で合唱しているようなヒメツルソバの可愛らしいピンクの球状の集合花や、燃え立つ炎のように生えるケイトウの鮮やかな赤や黄の花穂といった千紫万紅の彩りがふんだんに盛り込まれ、所々に若々しいオリーブやシマトネリコの苗木が植えられ、何体か、西洋チックな石膏のオブジェが花や木に埋もれるように飾られ、東側の庭園の真ん中には赤煉瓦で円状に囲われた直径三メートル程の池が有り、西側の庭園の真ん中には同じく赤煉瓦で円状に囲われた直径三メートル程の花壇が有り、東西の庭がシンメトリーになっていて東側の池では噴水が七色の虹の掛かった光彩陸離たる瑞々しい飛沫を噴き上げ、西側の花壇ではコスモスやキンギョソウやパンジービオラといった花々が噴水に負けじと色とりどりの鮮美な色合いを調和して花を添えている。