地球最後の日

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「いったい政府は今まで何をしていたんですか。発表が遅すぎると思うんですけれど」  司会のアナウンサーが女性アナウンサーに訊ねる。 「日本政府は自衛隊を米国に派遣。種子島宇宙センターでは巨大隕石の分析をしていました。各国の軍や宇宙情報機関など世界が一致団結し、あらゆる力を用いて隕石を破壊する工作を試みました。世界中の政府が協力して、隕石の軌道を変えようとしていました」 女性アナウンサーはそこまで一気に言って、息を整えた。 「努力の甲斐があって、一度は隕石の軌道が変わったのですが、きょう未明、巨大隕石の軌道が再び変わり、こちらに向かってきたのです。一度は解散した世界宇宙対策本部に各国が再び集結。現在スイスで会議が開かれております」      女性アナウンサーは司会者の顔を見る。 「隕石の軌道が再び変わるって、そんなことってあるんですか」 司会者は食いついた。 「通常ではありえないとのことです。しかし、現実的に軌道が変わったのは事実です。神秘としかいいようがありません。われわれ人間の手には負えない何かの力が加わったのか、こればかりはわかりません」  女性アナウンサーは説明した。    司会のアナウンサーはカメラを中継からスタジオにもどすように指示し、天文学者に地球滅亡の解説をするように話題を振った。 「CMのあとは、地球滅亡について詳しく解説します」  明るくもなく、暗くもなく、ごく淡々とした声で予告が入った。  爽やかなバックミュージックが流れ、車が景色のいい道路を走っているCMの次は、すべてACジャパンのCMになった。  政府の広告だ。
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