地球最後の日

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 ACジャパンのCMってことは、やっぱり地球がなくなるって本当なんだろうなあ。  日本大ピンチじゃん。私もピンチ?   あ、そろそろスーツを着ないといけない。でも会社に行っても仕方がないんじゃない?  ふと疑問がわいて、スマホの画面を見る。会社からは臨時休業のメールは届いていない。  行くべきか。行かないべきか。  CMがおわり、スタジオにカメラが戻った。    司会のアナウンサーは天文学者に「地球滅亡について、詳しく解説をお願いします」と話題を振った。  天文学者は巨大隕石の大きさ、重さなどは説明し、軌道について解説した。 「あとどれくらい、我々に時間が残されているんですか」  司会のアナウンサーは天文学者に質問を投げかける。 「そうですね、計算が正しければ6時間でしょうか。5時間と報道しているところもありますが、6時間だと思うなぁ」  天文学者はずり落ちたメガネを指で押し上げた。 「お昼過ぎには、つまり……」 「午後12時半ごろでしょうか。隕石が衝突しても、すぐに地球が壊れるわけじゃないんですよ。だから、滅亡までの時間の算出方法はいろいろあってですね。まあ、おおよそ午後12時半。そういうことですね」  天文学者はカンペを片手に声を張った。司会のアナウンサーはしゅぱっと前を向いてカメラに映る。 「地球滅亡まであと6時間。現在7時を回っているのであと5時間半くらいになりますか。あなたは、地球最後の時間、どう過ごしますか」  司会のアナウンサーの後ろでは、コメンテーターは「どうしてこんなに発表が遅れたんだ」と吠えていた。  たしかにコメンテーターがいうのはもっともだった。  せめて昨日言ってくれれば、孝太郎に会ったのになあ。孝太郎は付き合って半年の恋人だ。もう会えないのかなあ。いやだなあ。 「だから、私たちも努力していたんですよ。それから今も鋭意努力中です」 「努力していたら許されると思っているのか」 コメンテーターは怒鳴っている。天文学者の答えが癇に障ったらしい。 「じゃあ、何もしないでいろっていうんですか。一度は軌道が変わったんです。必死に私たちだってやっているんです」 「努力なんてどうでもいい。明日も生きていけるように何とかしてくれってことだ!」  コメンテーター、その通り。あなたは全人類の主張を訴えた。 「だから我々だって頑張っているんじゃないですか」  天文学者は顔を真っ赤にさせていた。  スタジオはカオスのようだった。司会のアナウンサーは眉根を寄せて黙っている。  さて、今日はどうしたらいいんだろう。会社に行くべきか。行ってもどうしようもないよな。  なんだかマンションの外が騒がしい。窓を開けると、救急車の音があちらこちらから聞こえ、目の前の道路をパトカーが走り去っていった。  みんなパニックなんだろうな。もしかしてどこかで暴動とか起きているんだろうか。どうしよう。会社に行けないな。でも会社にあいつは来なかったって言われるのもいやだなあ。  テレビではいろいろ言っているが、結論はやっぱりあと5時間ほどでみんな死ぬらしい。  どうやって死ぬのか。どうやって残りの時間を過ごすのか。それが問題だ。
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