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5時間。あと5時間。何をしよう。
もしかして朝ごはんなんか食べてる場合じゃない?
あ、親に電話しないと。 あと孝太郎にも。
スマホをみると、すでに孝太郎からメールが来ていた。メールには、「すでに携帯電話がつながりにくいらしい。また連絡する」と書いてあった。
じゃ、 実家に電話をすべきか。
スマホの電話帳を開こうとしていたら、母から電話が来た。すごいタイミングだ。きっと朝のニュースをみて、慌てて電話をくれたんだろう。
「大丈夫?」
鹿児島にいる母は心配そうだ。
「うん。東京はまだそんなにパニックじゃないよ」
外で消防車のサイレンが聞こえてきたので、窓を閉める。
「会社は?」
「たぶん、休みだと思う。会社からは連絡が来てないけど」
母に会社のことを聞かれて、やっぱり会社にも連絡しなくちゃと思った。
お母さん、今からわたし帰ろうかな」
「そうねえ。会いたいけど、無理よ。今ね、飛行機が動いてないんだって。それに動いていても会えないと思うよ」
母は仕方なさそうにいう。
「いまから急いで帰っても、家まで6時間以上はかかるものね。帰っている途中で死んじゃうのはいやだな」
わたしの言葉を母は黙って聞いていた。
「璃子、まだ死ぬと決まったわけじゃないから、しっかりしなさい。こういうときこそ、ちゃんとあらゆる事態を想定して考えないと。後悔は死んでから言いなさい。万が一のときもあるんだからね」
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