地球最後の日

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 孝太郎に今すぐ会いたくなった。孝太郎はまだ自宅だろうか。孝太郎は隣の駅近くのアパートで独り暮らしをしていた。歳は30歳で、同じビルに入っている会社の社員だ。  孝太郎にメールを書いていると、スマホの電話が鳴った。 「もしもし?」  孝太郎だった。 「璃子? 大丈夫? なんともない?」 「うん、今朝起きてびっくりした」 「オレもだよ」  孝太郎はため息交じりに笑った。 「そっちって、どう?」 「どう? って、救急車とか消防車のサイレンは鳴っていたけど、平和だよ。パトカーもさっき通ったけど、この辺じゃないみたい」 「よかった。暴徒化してるところもあるみたいだからさ。一人で外にでるなよ、危ないから」 「え? そうなの?」 「人生やり残したことをするんだって」 「ふーん。なるほど」  残りの人生もそれもありなのか。考えてもみなかった。でも、人様にご迷惑かけるのはどうなんだろう。  お母さんの言葉を思い出す。万が一ってこともある。 「もしかすると、これから停電とかもするかもな。電話も通じなくなるかも。実家には電話したのか?」 「そうかもね。うん、電話したよ、大丈夫」  それなら、今のうちスマホを充電しておかないと……。  部屋の中を見渡し、ほかにするべきことがないか考えた。 「璃子。俺、いまね、璃子んちの前。会いたくって来た」  わたしはあわてて玄関を開ける。  孝太郎が立っていた。  うれしくなって孝太郎をギュッと抱きしめる。孝太郎は冬の空気の匂いがした。頬を擦り付けると孝太郎の頬は冷たくかった。ひげがチクチクっとして痛かった。
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