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なんだかモヤモヤ
通勤電車でのこと。
後ろから
「すみません」
初老の男性に声をかけられた。
ドアからすぐ、座席の一番端の吊り輪に捕まっていた時のこと。
どうやら男性は網棚に荷物を置きたかったのだが、私が邪魔だったらしい。
荷物を置きやすいよう、ドア側に少し避けると、男性は荷物を網棚に置いて、そのままそこに居座った。
--え……?
辺りを見回す。
座席はすべて埋まっていたが、立っている人はまばらで。
反対側、つまり私の後ろは立っている人が少なく、網棚に荷物も起きやすい状態。
--……わざわざこの狭いところにいる必要、ある、のかな……?
仕方なく、吊り輪を手放し、少し高い位置にある隣の吊り輪を手にすると、男性は私が先ほどまで捕まっていた吊り輪を手にした。
モヤモヤとしたものを感じた1分後。
とある駅に着くと、目の前の座席に座っていた若い男性が立ち上がった。
--ああ、なるほど。
納得。
初老の男性は、この若い男性がその駅で降りることを知っていたのだ。
そこに座りたくて、わざわざ私を移動させた、という。
初老の男性は何事もなかったかのように座席に座ると、目を閉じ、夢の中へ入っていった。
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