忘れられない手紙

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ジープから男が出てきた。ヘッドライトの中に見える男は、 間違いなく桜田だった。 桜田は不機嫌な表情で歩み寄って来て、窓越しに真理に 言った。 「ドアを開けて出て来い」 桜田の顔は醜くゆがんでいた。 真理は怖いから、桜田の顔から目を背け、黙っていた。 すると桜田は、車を揺さぶり出した。真理の車は軽自動車 なので、そんなことをされるとたまったものではない。 「止めてください! 止めてください! 」 たまらず真理が叫んだ。顔を上げた真理に前方から車の ヘッドライトの灯りが見えた。 誰か来る。助けてもらえるかもしれない。 桜田は背を向けているため、車のライトに気づかなかった。 向こうからトラックがやってきた。 桜田と真理の車が不自然な形で停車しているので、不審 に思ったらしくトラックが停まった。
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