15人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、桜田は拳を振り下ろすことはなく右手の力を抜き、
チェッと舌打ちした。
そして、少し声量を減らして、「ただ、話をしに来ただけ
なんだ。なにも警察を呼ぶ必要はないだろう」と不満そう
な表情を見せた。
「あんたに会う気はないと思うよ。真理さん、帰ってもらって
いいよな! 」
輝夫は、真理の部屋のドアを見て、耳をそばだてた。
部屋から小さな声だったが「ハイ」と返事が返って
きた。
そばにいた桜田にも聞こえた。
桜田は顔を醜く歪め、「余計なことしやがって、おぼえてろ! 」
と叫ぶように言って、駐車場に向かった。
輝夫はその後ろ姿を外灯の白っぽい光で見ていた。
桜田は車に乗り込むと乱暴な運転で、駐車場を出て行った。
あたりが静かになり、ほっとした様子で輝夫はインターホン
のボタンを押した。真理がすぐに出た。
最初のコメントを投稿しよう!