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道路沿いには澄んだ小川が流れ、ひんやりとした冷気が上がってくる。誉さんが、川面に目を向けながら、
「夏になると川床が出るんだ」
「川床?」
「川面すれすれに作られる……まあ、しいて言えばテラスみたいなものだな。そこで飯が食えるんだ。涼しいんだぜ」
と教えてくれる。鴨川の床みたいなものだろうかと考えながら歩いていると、左手に赤い鳥居が見えて来た。鳥居の向こうは石造りの階段になっており、両側に赤い灯篭がずらりと上まで連なっている。
ガイドブックで見た通りの景色に感動し、
「わあ、すごい……!素敵ですね」
手を合わせて誉さんを振り向くと、誉さんは無邪気に喜んでいる私が面白かったのか、目を細めて笑っていた。
「上まで上るぞ」
石造りの階段を上り境内に入ると、真っ先に躍動感のある白色と黒色の馬の像が目に入った。
「馬?神馬でしょうか?」
首を傾げながら馬の像を見上げた私に、誉さんは、
「止雨と降雨の祈願をする馬だ。ここ貴船神社の御祭神は、高龗神という水神でな、代々の天皇は、大雨の時は白い馬を、日照りの時は黒い馬を奉納して、祈願をしたんだ。それが次第に生きた馬から馬形の板になり、それが絵馬の元になったと言われている」
と説明をしてくれる。
(神社でお馴染みの絵馬には、そんな由来があったのか)
絵馬の起源を聞き、私は「へええ……」と感心した。
神馬像の横の手水舎で手と口を清めると、私たちは階段を上がり、本殿に向かった。
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