3.大文字山登山

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 店内の掃除をしたり、窓ガラスを拭いたりした後、11時になったので、私は店の外にメニューが書かれたブラックボードを出した。  いつもの場所に設置し、店内に戻ろうとドアノブに手を掛けた時、 「あの、もうお店開いてますか?」 背後から声を掛けられ、私はぱっと振り向いた。見ると、観光客らしき若い女性のふたり連れがブラックボードを覗き込んでいる。 (お客さんだ!)  開店早々、客が来てくれたことに嬉しくなり、 「いらっしゃいませ!開いてますよ!」 私は、最高に愛想のいい声で返事をした。 「お好きなお席へどうぞ」  女性客を店の中へ案内する。  選び放題のテーブルを目にし、女性客は顔を見合わせ相談をすると、小川の見える窓辺の席を選んで腰を掛けた。  すぐに水とメニューを用意し、彼女たちのところへ向かう。 「こちらがメニューです」  水を置いた後、メニューを手渡し、少し離れた場所まで下がり、呼ばれるのを待った。 「わぁ~、美味しそう。本日のパスタは今日はカルボナーラだって。私、パスタにしようかなぁ」 「それなら私は、トマト&モッツアレラチーズのホットサンドイッチにするわ。すみませーん!」  彼女たちはすぐにメニューを決めると、私を呼んだ。 「では、パスタセットでアイスコーヒー、トマト&モッツアレラチーズのホットサンドイッチセットでアイスティーですね」  キッチンへ行くと、私がメニューを伝えるまでもなく、声が聞こえていたようだ。既にパスタを茹で始めていた颯手さんに、念のため、メニュー内容を伝えると、 「了解や」 颯手さんは頷いた。  颯手さんが鮮やかな手つきでパスタを作り、同時並行でホットサンドイッチも準備していく。私は、既に冷蔵庫に用意してあったグリーンサラダを取り出し、トレイに乗せた。  あっという間に、ランチセットが出来上がると、私は女性たちの元へ運んで行った。 「こちらが本日のパスタで、こちらがトマト&モッツアレラチーズのホットサンドイッチでございます」  彼女たちは運ばれてきた料理を見て「わあ!」と歓声を上げると、スマホを取り出し、パシャパシャと写真を撮り始めた。 「後でSNSに上げようっと」 「私も」  キッチンから出て来た颯手さんが彼女たちの会話を耳にし、 「あの子らがSNSに僕の店の良い評価を書いて投稿してくれはったら、ええ宣伝になるわ。そうや、SNS映えする新メニューでも作ろかな」 嬉しそうに私に耳打ちした。
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