4.護王神社の狛いのしし

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 誉さんは短くなったタバコを携帯灰皿に押し付けると、手すりから身を起こし、立てかけてあった松葉杖を手に取った。肩を落として部屋に戻って行く誉さんの背中を見て、 「あ、あのっ!ひとりでご飯とか、大丈夫ですか?」 私は思わず、そう声を掛けていた。 「ん?」  誉さんが怪訝そうに振り返る。 「私、作りますよ」 「別に、適当に食うから、ひとりで問題はないが……」 「いいえっ」  私は、日ごろの恩義をここで返す時、とばかりに誉さんに詰め寄ると、 「作らせてくださいっ」 と迫り、 「あ、ああ……そんなに言うなら、頼む」 無理矢理、誉さんに頷かせた。
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