1890人が本棚に入れています
本棚に追加
料理が揃うと、誉さんが手を伸ばして、冷蔵庫の中から缶ビールを取り出した。私は自分の分のお茶を用意すると、誉さんの向かい側に座った。
「美味そうだな」
「手抜き料理です。すみません……」
ありあわせで作った、とても胸を張れるような料理ではないので、申し訳なく思っていると、
「謙遜するな」
誉さんはそう言って「いただきます」と手を合わせた。キャベツの豚バラ巻きを箸でつまみ、口に運ぶ。
「うん、美味い」
「……!」
(良かった……!)
ほっとしていると、
「あんた、料理上手だな」
口元に料理を運んでいた誉さんが上目づかいで私を見て、ふっと笑った。
誉さんの誉め言葉に、思わず頬が熱くなる。
ふと、圭祐のことを思い出した。彼は凝ったものを食べたがり、あまり私の料理を褒めてくれなかったように思う。
「あ、ありがとうございます……」
もしかすると、顔が赤くなっているかもしれない。それを隠すように、私は俯きがちに小さな声でお礼を言うと、
「いただきます」
手を合わせ、箸を取った。
最初のコメントを投稿しよう!