4.護王神社の狛いのしし

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 閉店間際の『Cafe Path』。最後の客は今日も誉さんだった。  最近の『Cafe Path』は、日中、以前の閑古鳥状態だった頃が懐かしく思えるほど、客が入るようになっている。こうして店でゆっくりと3人で話が出来るのは、閉店前のこの時間だけになっていた。  コーヒーを飲んでいた誉さんに、 「誉、ようやっとギプス取れて良かったやん」 颯手さんが、明るく声を掛けた。 「やっと身軽になってせいせいしたぜ」  1ヶ月近くギプスで足を固定されていた誉さんは、ようやく解放されたことに、やれやれと肩をすくめた。 「お疲れ様でした。今度、護王神社にお礼参りに行きましょう!」  床にシート式のモップをかけていた私は、手を止めると、笑顔で誉さんに声を掛けた。すると、 「あんたにも迷惑かけたな。毎日、飯を作ってくれて助かった」 思いがけず誉さんから労いの言葉を貰い、驚いた。 「あんたの飯は美味かった」 「……!」  更なる誉め言葉に、ドキッとする。 「ま、また、いつでも作りますよ……!なんなら、これからも毎日作ります!」  思わず前のめりに提案すると、 「愛莉さん、外に『Close』の札、出して来てくれへん?あと、少し落ち葉落ちてるみたいやから、掃いといてくれると嬉しいわ」 颯手さんが微笑を浮かべながら、私と誉さんの会話を遮った。 「あっ、は、はいっ。分かりました」  突然の指示に吃驚して、慌てて返事をする。  私はモップをしまい、箒と塵取りを取ってくると、「Close」の札を手に扉の外に出た。  そして――。 ◇
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