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そして、いそいそと長袖Tシャツとデニムに着替え、ウィンドブレーカーを羽織った私は、リュックに荷物を入れて背負い、アパートの1階へと下りて行った。
誉さんは私が準備をしている間に先に出て颯手さんの家にバイクを取りに行っていたのか、アパートの前には既に黒いボディのNinjaが停まっていた。誉さんが立ちゴケして付けた傷は、すっかり綺麗になっている。
タンクにマグネット式のバッグを取り付けている彼に、
「すみません、お待たせしました」
と声を掛けると、誉さんは振り返り、
「ほら、ヘルメットとジャケット」
バイクに掛けてあったヘルメットとジャケットを私に向かって差し出した。
男物の大きなジャケットを着こみながら、
「どこへ行く予定なんですか?」
と尋ねると、
「そうだな……貴船とかいいかもな」
誉さんは顎を撫でながら答える。
「貴船って、貴船神社のある貴船ですか?」
「そうだ」
「わあ!一度行ってみたかったんです!」
以前、貴船神社の参道の階段に赤い灯篭が並んだ幻想的な写真を、ガイドブックで見たことがある。京都らしい情緒に溢れ、とても素敵な場所だと憧れていた。
「じゃあ決まりだな。乗れよ」
誉さんはヘルメットをかぶるとバイクに跨り、私を促した。私も慌ててヘルメットをかぶり、人生2度目のツーリングに期待で胸を膨らませながら、四苦八苦して後部シートに跨った。
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